Shopify Plus(エンタープライズ版)はいつ検討すべき?通常プランとの違いと移行ライン

ShopifyでEC事業が順調に成長し、売上規模が大きくなってくると、必ずと言っていいほど直面する悩みがあります。
「そろそろ上位プランの『Shopify Plus』にするべきか、まだ通常プランで粘るべきか」という問題です。
通常プラン(Basic, Standard, Advanced)と比較して、Shopify Plusは月額料金が大きく上がります。しかし、多くの成長企業が移行を決断するのは、コスト以上の明確なリターン(投資対効果)があるからです。
本記事では、Shopify Plusと通常プランの決定的な違いと、移行を検討すべき具体的な「ライン(損益分岐点)」について解説します。
Shopify Plus(ショッピファイ プラス)とは?
Shopify Plusは、大規模な取引量を持つマーチャント(事業者)向けに設計されたエンタープライズプランです。
AllbirdsやGymsharkといった世界的なD2Cブランドをはじめ、日本でも土屋鞄製造所やオリオンビールなど、多くの有名企業が導入しています。
通常プランとPlusプランの比較表
移行の前段階としてよく利用される通常プラン最上位の「Advanced」と「Shopify Plus」の主な違いをまとめました。
| 機能・項目 | Advancedプラン | Shopify Plus |
|---|---|---|
| 月額費用 | $399 USD | $2,300 USD〜 |
| 取引手数料 (外部決済利用時) |
0.5% | 0.15% |
| スタッフアカウント数 | 15 | 無制限 |
| チェックアウト画面 | 編集不可 | フルカスタマイズ可 (Checkout Extensibility) |
| 拡張ストア作成 (海外版などの別店舗) |
有料で契約追加 | 9店舗まで追加無料 |
| B2B(卸売り)機能 | アプリ等で対応 | 標準搭載 (B2B on Shopify) |
移行を検討すべき「3つのライン」
では、具体的に「いつ」切り替えるべきなのでしょうか。私たちは主に以下の3つのトリガーで判断することをお勧めしています。
1. 決済手数料の削減メリットが出るライン
これが最もわかりやすい指標です。Shopify Plusは、外部決済サービスを使用した場合の取引手数料が、通常プランよりも圧倒的に安く設定されています。
- 通常プラン(Advanced): 0.5%
- Shopify Plus: 0.15%
この「0.35%」の差は、売上規模が大きくなるほど効いてきます。
単純計算ですが、外部決済(クレカ以外やAmazon Payなど)の利用比率が高い場合、月商が数千万円〜億単位になってくると、月額利用料の差額を手数料削減分だけでペイできるようになります。
2. チェックアウト画面のカスタマイズが必要になった時
通常プランでは、セキュリティの観点から「チェックアウト画面(決済画面)」の編集が厳しく制限されています。
しかし、Shopify Plusでは「Checkout Extensibility(チェックアウトの拡張性)」を利用して、この画面を自由にカスタマイズできます。
- 配送日時指定のUIを使いやすく変更する
- 購入完了画面で、ついで買い(クロスセル)を提案する
- 独自のポイントシステムを決済画面で適用させる
「カゴ落ち率(CVR)をあと1%改善したい」というフェーズにおいて、チェックアウト画面を触れるか否かは決定的な差となります。この機能のためにPlusへ移行する企業も少なくありません。
3. BtoB(卸売り)や複数店舗展開を本格化する時
Shopify Plusには、通常プランにはない強力な拡張機能が標準でついてきます。
- B2B on Shopify:
1つのストア内で、一般客と卸売業者(BtoB)を共存させ、卸売価格や掛け払いを設定できる機能。 - Expansion Stores(拡張ストア):
追加料金なしで、同一ブランドの別サイト(例:海外向けサイト、アウトレット専用サイトなど)を9つまで作成可能。
もし、BtoB専用サイトを別に立ち上げようとしているなら、Plusにアップグレードして一元管理した方が、トータルコストが安くなる場合があります。
Shopify以外のカートも含めたBtoB ECの比較は、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【2025年版】BtoB向けECサイト制作に強いプラットフォーム5選と選び方の基準
その他のShopify Plusだけの特権
コストやチェックアウト以外にも、運用の安定性を高める機能が提供されます。
専任サポートとLaunchpad
Shopify Plusには「マーチャントサクセスプログラム」という優先サポートがつきます。
また、セールの開始・終了に合わせて、テーマの切り替えや商品価格の変更を自動化できるツール「Launchpad(ローンチパッド)」が使用可能です。
フラッシュセール(期間限定セール)などで大量のアクセスが集中する際も、Plus専用のサーバー環境により、より強固な安定性が保証されます。
APIの呼び出し制限(レートリミット)の緩和
基幹システムやERP、在庫管理システム(WMS)とAPI連携を行う際、通常プランではAPIの呼び出し回数に制限があり、連携スピードに影響が出ることがあります。
Plusではこの制限が大幅に緩和(または2倍に)されるため、大規模なデータ連携もスムーズに行えます。
さらに売上を伸ばすための施策
Shopify Plusへの移行を検討されているということは、さらなる事業拡大を目指されていることと思います。
プランのアップグレードと同時に、以下の施策も見直すことで、リニューアルの効果を最大化できます。
機能拡張に優れたShopifyですが、入れすぎは禁物です。プロが選ぶ推奨アプリをチェックしておきましょう。
関連記事:Shopifyアプリのおすすめ10選|日本の配送・決済・帳票出力に対応する必須アプリと導入コスト
Instagramショッピング機能など、販売チャネルを増やすことは売上拡大の近道です。
関連記事:Shopify×Instagram連携のやり方|「Shop」機能を使ってSNS投稿から直接購入させる設定フロー
まとめ:事業フェーズに合わせた最適なプラン選択を
Shopify Plusは「高い」プランではなく、「大規模事業者のためのインフラ」です。
月商規模が拡大し、手数料負担が増えている場合や、独自の購入体験を提供してブランド価値を高めたい場合には、十分に元が取れる投資となります。
「自社の売上規模で移行すべきかシミュレーションしたい」「Plus独自の機能を活用したサイトにリニューアルしたい」という場合は、ぜひ専門家にご相談ください。
digrartでは、Shopify通常プランからのアップグレードや、Plusを前提とした大規模ECサイトの構築支援を行っております。
Shopify Plus導入・移行の相談はこちら
関連サービス:大阪のECサイト制作・Shopify構築支援
この記事を書いた人
大阪市中央区にて2009年よりWeb制作・運用支援を行い、1,000件以上の実績を持つWeb制作会社「digrart(ディグラート)」編集部が、本記事を執筆・監修しています。
現場で培った豊富な知見を活かし、Webサイト制作、ECサイト制作、SEO対策、Webコンサルティングの実践的なハウツーをお届けします。
初心者からプロまで、Web戦略の成功をサポートする実務ベースの情報が満載です。
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