ECサイトの「ランニングコスト」を安く抑えるには?サーバー代・決済手数料・保守費の年間シミュレーション

ECサイトは「作って終わり」ではありません。構築費用(イニシャルコスト)だけでなく、運営していくための「ランニングコスト」が毎月発生します。
「思ったより利益が残らない…」という場合、このランニングコストが膨らんでいる可能性があります。
利益を最大化するためには、売上を上げることと同じくらい、日々の運営費用を適切に管理し、安く抑えることが重要です。
本記事では、ECサイト運営にかかる主要なランニングコストの内訳と、構築方法別の年間費用シミュレーション、そしてコストを削減するための具体的なポイントを、大阪のWeb制作会社digrartが解説します。
ECサイト運営にかかる主なランニングコストの内訳
ECサイトを維持・運営するために必要な費用は多岐にわたります。まずは何にどれくらいの費用がかかるのか、全体像を把握しましょう。
| 費目 | 内容 | 費用の目安(月額) |
|---|---|---|
| ①サーバー・ドメイン費用 | サイトのデータを置くサーバーと、インターネット上の住所となるドメインの維持費。 ※ASPカートの場合はシステム利用料に含まれることが多い。 |
数千円~数万円 |
| ②システム利用料 (ASPカートの場合) |
Shopifyやmakeshop、BASEなどのカートシステムを利用するための月額費用。 プランによって機能や容量が異なる。 |
無料~数十万円 |
| ③決済手数料 | クレジットカード決済やコンビニ決済などを利用する際に、決済代行会社に支払う手数料。 売上金額の数%がかかる変動費。 |
売上の3.0%~5.0%程度 |
| ④販売手数料・トランザクション料 | 商品が売れるたびに発生する手数料。一部のASPカート(BASEなど)や、Shopifyで外部決済を利用した場合にかかることがある。 | 売上の数% |
| ⑤保守・運用・更新費 | システムのアップデート、セキュリティ対策、バグ対応、商品登録やページ更新作業などを外部に委託する場合の費用。 | 数万円~数十万円 (内容による) |
| ⑥広告宣伝費 | 集客のためのWeb広告(リスティング広告、SNS広告など)やSEO対策にかかる費用。 ※必須ではないが、売上拡大には不可欠。 |
予算次第 (売上の10~30%が目安) |
特に注意が必要なのは、売上に比例して増加する「③決済手数料」と「④販売手数料」です。初期費用や月額固定費が安くても、手数料率が高いと、売上が伸びるほど利益を圧迫する原因になります。
【構築方法別】年間ランニングコストのシミュレーション比較
ECサイトのランニングコストは、どの構築方法(プラットフォーム)を選ぶかによって大きく異なります。
ここでは、代表的な「ASPカート」と「オープンソース(自社構築)」について、売上規模別の年間コストをシミュレーションしてみましょう。
※以下の試算は概算です。実際の費用は、選択するプラン、決済代行会社、為替レート、追加機能(アプリ)の有無などにより変動します。
※広告宣伝費、保守運用を外注した場合の費用は含んでいません。
パターンA:ASPカート(Shopify, makeshopなど)
サーバー管理が不要で、常に最新の機能を利用できるのがメリットです。初期費用や月額固定費は比較的抑えられますが、プランや決済方法によっては販売手数料がかかる場合があります。
【例:Shopify ベーシックプラン】
月額固定費(約$25≒3,800円)+決済手数料(Shopifyペイメント利用時:3.4%)で試算。
| 月商 | 月間コスト(概算) | 年間コスト(概算) | コスト率 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 約20,800円 | 約25万円 | 約4.2% |
| 300万円 | 約105,800円 | 約127万円 | 約3.5% |
| 1,000万円 | 約343,800円 | 約413万円 | 約3.4% |
売上規模が大きくなると、上位プラン(月額固定費は上がるが手数料率が下がる)へ切り替えることで、トータルコストを抑えられる可能性があります。
Shopify、makeshop、BASEなど、主要なASPカートの特徴や料金の違いについては、以下の記事で詳しく比較しています。
関連記事:ECカート選定の正解は?Shopify・makeshop・BASEを徹底比較
パターンB:オープンソース(EC-CUBE, WordPress+WooCommerceなど)
ソフトウェア自体は無料で利用でき、カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。ASPのような販売手数料はかかりませんが、サーバー・ドメイン費用や、セキュリティ対策・システム保守の費用が自己負担となります。
【例:EC-CUBEを自社サーバーで運用】
サーバー・ドメイン費(月5,000円)+決済手数料(一般的な決済代行会社:3.6%)で試算。
※システム保守費用は含まず。
| 月商 | 月間コスト(概算) | 年間コスト(概算) | コスト率 |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 約23,000円 | 約28万円 | 約4.6% |
| 300万円 | 約113,000円 | 約136万円 | 約3.8% |
| 1,000万円 | 約365,000円 | 約438万円 | 約3.7% |
参照元:EC-CUBE(公式サイト)
表面的にはASPと大差ないように見えますが、オープンソースの場合、ここへさらに「システムの保守管理コスト(セキュリティ対応、バージョンアップ対応など)」が加わります。
自社に技術者がいない場合、制作会社への保守委託費用(月額数万円〜)が必要になるため、実質的なランニングコストはASPよりも高くなる傾向があります。
ECサイトのランニングコストを安く抑える3つのポイント
ランニングコストを最適化し、利益率を高めるための具体的なポイントをご紹介します。
1. 自社の事業規模に合ったプラットフォームを選ぶ
「機能が豊富だから」という理由だけで高額なプランやシステムを選ぶのは避けましょう。初期段階では、固定費の安いASPカート(BASEやShopifyの低価格プランなど)から始め、売上規模に合わせてプランアップしていくのが賢明です。
不要な機能にお金を払っていないか、定期的に見直すことが大切です。
2. 決済代行会社・決済方法の手数料率を比較する
決済手数料はランニングコストの中で大きな割合を占めます。
ASPカートの場合、指定の決済サービスを利用すると手数料が優遇されることが多いです(例:Shopifyペイメント)。外部の決済代行会社と契約する場合は、複数社から見積もりを取り、手数料率や固定費を比較検討しましょう。0.1%の違いでも、年間で見ると大きな差になります。
3. システム連携で運用コスト(人件費)を削減する
目に見える費用だけでなく、運営にかかる「手間(人件費)」もランニングコストの一部です。
受注処理、在庫管理、発送業務などを手作業で行っていると、売上が増えるほど人手が必要になり、コストが増加します。
ECカートと外部システム(在庫管理、POSレジ、物流倉庫など)をAPI連携させることで、業務を自動化し、運用コストを大幅に削減できます。
【制作実績】システム連携による運用コスト削減事例:A.D.S.R.様
アイウェアブランド「A.D.S.R.」様のECサイトリニューアルでは、Shopifyをベースに、実店舗のPOSレジ(スマレジ)、在庫管理システム(ロジクラ)、会員情報連携(Omni Hub)を組み合わせたOMO(Online Merges with Offline)を実現しました。
これにより、実店舗とECの在庫が一元管理され、「売り越し」や「機会損失」を防ぐとともに、在庫調整にかかるバックヤード業務を大幅に効率化。運用にかかる人的コストを削減しながら、顧客体験の向上にも繋がっています。
実績詳細はこちら:A.D.S.R.様 Shopify構築事例
関連記事:実店舗とECの在庫連携(OMO)|スマレジ等のPOS導入メリットと在庫ロス削減効果
まとめ:ランニングコストを含めた「最適なプラン」をご提案します
ECサイトのランニングコストは、構築方法や売上規模によって大きく変わります。利益を出すためには、固定費や手数料を抑える努力が不可欠ですが、コスト削減ばかりに目を向けて必要な投資(セキュリティや機能拡張)まで削ってしまうと、事業の成長を止めてしまいます。
だからこそ、ECサイト構築においては「初期費用」と「数年間のランニングコスト」をセットで考えることが重要です。
digrartでは、特定のカートシステムありきでの提案はいたしません。
お客様が「扱う商材」「実現したい機能」「将来の事業計画」そして「かけられるコスト」を事前に丁寧にヒアリングさせていただき、その上でShopifyなどのASPカートが良いのか、オリジナルECシステムが良いのか、フラットな視点で貴社にとっての「最善」をご提案させていただきます。
大阪でコストパフォーマンスの高いECサイト構築や、既存サイトの運用コスト見直しをご検討の方は、ぜひ一度digrartへご相談ください。
御社のフェーズに合わせた、無理のない最適な運用プランを一緒に考えましょう。
無料相談はこちらから
関連サービス:大阪のECサイト制作・構築
この記事を書いた人
大阪市中央区にて2009年よりWeb制作・運用支援を行い、1,000件以上の実績を持つWeb制作会社「digrart(ディグラート)」編集部が、本記事を執筆・監修しています。
現場で培った豊富な知見を活かし、Webサイト制作、ECサイト制作、SEO対策、Webコンサルティングの実践的なハウツーをお届けします。
初心者からプロまで、Web戦略の成功をサポートする実務ベースの情報が満載です。
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