ECサイト制作の要件定義テンプレ|RFP雛形と質問集

「制作会社に伝えるべき情報、どこまで書けばいい?」——多くの担当者が悩むのはここです。
結論、RFP(提案依頼書)と要件定義を“同じ言葉・同じ粒度”で整理することで、見積りのブレや実装の取りこぼしは大幅に減ります。本記事では、すぐ使えるRFP雛形、ヒアリングにそのまま使える質問集、そして非機能要件(速度・セキュリティ・法令・アクセシビリティ)の具体数値まで提示します。これだけで発注準備は9割完了です。
本記事のゴール
- ブレないRFPを30分で骨子作成できる
- 機能/非機能の抜け漏れをチェックできる
- 比較表でフェアにベンダー評価ができる
要件定義の全体像(5レイヤー)
1. ビジネス目標・KPI
売上、CVR、平均客単価、LTV、回遊指標など。公開後3〜6ヶ月のKPIまで必ず明記。
(速度KPIはCore Web Vitalsの閾値を目安に:LCP≤2.5秒、INP≤200ms、CLS≤0.1 を“良好”の基準とする。
2. ターゲット・提供価値
主要ペルソナ/購入障壁/競合との差別化(価格以外)。ベンチマーク3例を書き添える。
3. 機能要件(必須/検討/今回は対象外)
カート・決済・定期購入・レビュー・クーポン・B2B(見積/承認/掛売)等の優先度を整理する。
4. 非機能要件(具体値で)
速度(CWV基準)、可用性、バックアップ、セキュリティ(PCI DSSリファレンス)、アクセシビリティ(WCAG 2.2 / JIS X 8341-3のAA準拠目標)、法対応(特定商取引法、個人情報保護法)を明文化。
5. 体制・進行・予算
スケジュール、ステークホルダー、承認フロー、予算レンジ(上限・下限)、支払い条件。
RFP雛形 サンプル
1. プロジェクト概要
- 目的:【新規/移行/リニューアル】、成功指標(KPI)
- 公開希望日:【YYYY/MM/DD】
2. 現状と課題
- 現行サイト:【URL】/売上構成/運用体制/主要課題(例:CVR停滞、在庫連携、速度)
4. 機能要件の優先度
- 必須:商品管理、検索(絞り込み/並び替え)、カート、決済(クレカ/コンビニ/後払い 等)、配送計算、メール通知、レビュー、クーポン、会員機能
- 検討:定期購入、ギフト、B2B(見積/承認/価格表)、外部在庫連携(POS/WMS)、RFM連携、レコメンド
- 今回は対象外:【例:マーケットプレイス連携】
5. 非機能要件(具体値)
- 速度:LCP≤2.5s、INP≤200ms、CLS≤0.1(モバイル75パーセンタイル基準)。INPは2024年にFIDの後継として正式採用。
- セキュリティ:クレカ情報は自社非保持/PCI DSS準拠事業者のゲートウェイ利用。
- アクセシビリティ:WCAG 2.2を参照、JIS X 8341-3のAA相当を目標。
- 法令:特定商取引法の最終確認画面表示・誇大広告禁止等に準拠、個人情報保護法ガイドライン準拠
6. データ移行範囲
- 商品(バリエーション/タグ/メタ)、顧客、注文、レビュー、リダイレクト一覧(URLマッピング)
7. 外部連携
- POS/在庫、会計、MA/CRM、配送、レビュー/SMS、BI(GA4/BigQuery)
8. 制作範囲と成果物
- 画面一覧、ワイヤー、デザイン、テンプレート、モジュール一覧、テスト仕様、マニュアル
9. 体制・マイルストーン
- キックオフ/要件確定/デザイン確定/結合試験/UAT/ローンチ
打ち合わせで使える「質問集」
ビジネス&KPI
- 売上の分解(流入×CVR×客単価)で最も伸ばしたい指標は?
- 3ヶ月後・6ヶ月後の数値目標は?
商品・在庫
- SKU構造(色/サイズ/素材)と在庫の所在(EC/店舗)の関係は?
- セット品・予約販売・名入れ等の特殊ルールは?
決済・配送
- 決済手段の必須/任意(後払い・コンビニ・ポイント)
- 配送ロジック(クール便、同梱不可、離島、倉庫複数)
B2B(該当時)
- 価格表(会員別/取引先別)、見積〜承認フロー、掛売の有無
マーケ&計測
- GA4/KPIのイベント設計、タグ運用ポリシー
- レビュー・UGCの運用ルール
非機能・法令
- 速度KPI(CWV)、稼働率、セキュリティ/法対応の社内基準
- レビュー・UGCの運用ルール
非機能要件を“数字”で決める
- 速度(Core Web Vitals):LCP≤2.5s、INP≤200ms、CLS≤0.1。INPは2024/3/12に正式採用。
- アクセシビリティ:WCAG 2.2(AA相当)を基準に要件化、国内は JIS X 8341-3:2016を参照。
- セキュリティ:カード情報はゲートウェイへ委託し、PCI DSS準拠ベンダーを利用。
- 法令:特定商取引法(最終確認画面の必須表示・誇大広告の禁止 ほか)、個人情報保護法ガイドラインに準拠。
見積依頼パッケージの作り方
- 同一条件で依頼:RFP + 画面一覧(サイトマップ/ワイヤー簡易)+ データ移行範囲 + 非機能の具体値
- 納品物の定義:テンプレ/モジュール、テスト、運用ドキュメント、権利関係(著作権・ソース管理)
要件定義チェックリスト
- 3〜6ヶ月のKPIを数値で書いた
- 機能優先度を区別した
- 速度(LCP/INP/CLS)の具体目標を記載した
- 特商法の最終確認画面表示要件を設計に反映した
- 個人情報保護法ガイドラインに沿ってプライバシー記載を定義した
- アクセシビリティはWCAG 2.2 / JIS 8341-3 AA相当で目標化した
- データ移行の範囲/難易度とリダイレクトを明記した
- 見積フォーマットは人日内訳まで統一した
よくある質問(FAQ)
Q1:まずはRFPなしで概算見積をもらえますか?
A. 可能ですが、ざっくり幅が広くなります。この記事の雛形だけでも埋めていただくと、誤差が一桁小さくなります。
Q2:速度の目標値って本当に必要?
A. はい。CWVの基準(LCP/INP/CLS)はUXだけでなく、計測・テストの基準にもなります。数字があると合意形成が速いです。
Q3:B2B機能は後からでも入れられますか?
A. 後付けは可能ですが、価格表・承認フローを前提に設計した方が、後戻りコストが小さく済みます。
Q4:決済を外部ゲートウェイに任せればセキュリティは十分?
A. 自社でカード情報を保持しない方針は妥当です。合わせてPCI DSS準拠の事業者かを確認しましょう。
Q5:法令対応はどこまで記載すべき?
A. 特商法の表示と個人情報保護法ガイドラインへの準拠は明記を。最終確認画面の要件は見落とされがちです。
まとめ
要件定義=RFPは「言語化×具体値」の勝負です。機能(必須/検討)と非機能(速度・セキュリティ・法令・AA)を数値で定義し、移行/連携/体制まで一枚で揃える。これが見積りの精度と実装の再現性を最大化します。
大阪でECサイト制作をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。
無料相談はこちらから
関連サービス:ECサイト制作
この記事を書いた人
digrart編集部
大阪市中央区のweb制作会社のメンバーが、Webサイト制作、ECサイト構築、SEO対策、Webコンサルティングの最新情報や実践的なハウツーをお届けします。初心者からプロまで役立つノウハウや業界トレンドを分かりやすく解説。web戦略の成功をサポートするための情報が満載です!