ECサイト制作×UI/UX|使いやすさを上げる設計原則と改善術

「商品は良いのに、離脱が多い」「スマホで操作しづらいと言われる」——ECの成果は、UI/UX(使いやすさ)の出来で大きく変わります。まずは普遍的な設計原則(ニールセンの10原則や行動則)を土台に、ナビゲーション・商品詳細・検索/フィルタ・フォーム/チェックアウトを重点改善。検証済みのガイド(Google・NN/g・Baymard・W3Cなど)をベースに、今日から反映できる改善チェックまで一気に整理します。
まず押さえるUI/UXの設計原則(ヒューリスティック)
最短で成果に近づくには、個別最適の前に普遍的原則を敷きましょう。ニールセンの10原則(可視性・実世界との一致・一貫性・エラー予防など)は、ECでも強力に機能します。あわせてヒックの法則(選択肢が多いほど意思決定が遅くなる)、フィッツの法則(ターゲットが大きく近いほど素早く押せる)を、メニュー・カード・ボタン設計に落とすと、直感的に“迷わない・外さない”UIに近づきます。
認知負荷を下げる:選択肢の整理(ヒックの法則)
- グローバルナビは主要カテゴリを7±2件を目安に束ね、二段目以降をメガメニューで整理
- フィルタはよく使う軸(価格/サイズ/色/在庫)先頭に、その他は折りたたみ
- “おすすめ/売れ筋/新着”など答えを先に示す導線で迷いを減らす
選択肢は数×複雑さの積で負担が増えます。まず“最頻タスクに必要な選択”を露出し、残りは遅延表示が無難です。
タップしやすい:サイズと距離(フィッツの法則)
- 主要CTAは大きく・間隔広め(誤タップを防ぎ、決定までの時間を短縮)
- 関連操作は近接配置(例:数量選択とカートボタン)
- 画面端の利用(親指可動域を考慮し、フローティングCTAや固定バーを活用)
ターゲットは大きいほど/近いほど速く正確に操作できます。ボタン群は密集させず、視認性と誤操作率のバランスを意識しましょう。
可視性・フィードバック・一貫性(ニールセンの10原則)
- 状態の可視化:読み込み・在庫・配送目安・適用中のフィルタを明示
- 結果のフィードバック:カート追加・クーポン適用はその場でトースト表示
- 言葉と見た目の一貫性:ボタン文言/価格表記/単位/日付形式をサイト横断で統一
可視性/一貫性/エラー予防は最小コストでUXを底上げできる基本です。
ECに効く画面別UI:一覧・詳細・検索/フィルタ
ECは一覧→詳細→購入が王道動線。ここで“探しやすい・比べやすい・納得できる”を作ると、回遊とCVが滑らかになります。Googleはリンク構造と到達性を重視するため、メニュー→カテゴリ→商品へリンクだけで辿れる設計を前提に。長いリストはページ分割/もっと見る/無限スクロールのどれを選ぶにせよ、次のURLが<a href>で露出していることが重要です。
一覧ページ(PLP):比較の“材料”を冒頭に
- 並び替え/価格帯ショートカット/在庫ありを上部に
- サムネ複数枚/色チップで“違い”を一目で
- カード幅は一定に、価格と割引・送料表示の位置を固定
比較軸を上にまとめると視線移動が短縮。違いが早く分かれば詳細到達率が上がります。
商品詳細(PDP):不安を消す情報の出し方
- サイズ表/素材/同梱例/返品・配送目安を折りたたみで整理
- 長所/短所・FAQ・比較を同一画面内リンクで補足
- レビューは“実体験+具体性”(サイズ感/使用環境/写真)を促すUI
意思決定に必要な根拠情報を近接配置。レビューは体験+定量が評価されやすい傾向です。
検索/フィルタ:速く、戻りやすく
- 検索中のキーワード/条件チップを常時可視化し、ワンタップで解除
- 在庫あり/即日発送など意図の強い条件を固定
- 結果はURLに条件を反映(共有しやすさ/戻りやすさ向上)
条件の現在地が見えれば迷子防止に効きます。
直帰・離脱を減らす「フォーム/チェックアウト」実務
カゴ落ちは約70%前後と言われ、追加費用や会員強制、フォーム負荷が主因です。項目削減・ラベル/エラー設計・インラインバリデーション・支払い/配送の摩擦低減が効きます。公的デザインシステムとBaymardの長年の研究を併用すると、“エラーを起こさせない/起きてもすぐ直せる”導線に。まず計測→摩擦の大きい箇所から順に改善しましょう。 参考:https://baymard.com/lists/cart-abandonment-rate
ラベルと入力:プレースホルダ“だけ”にしない
- ラベルは常時可視(上配置が無難)/placeholderは補助に限定
- オートフィル/郵便番号→住所補完で入力コストを削減
- 必須/任意の規則を統一、半角/全角/記号など受理範囲を明示
placeholderのみは視覚障害・回想困難の観点で不利、ラベル常時表示が推奨。モバイルはラベル上配置が読みやすいとの研究もあります。
インラインバリデーション:いつ/どこで出すか
- 入力完了後に即時検証、エラーは当該フィールドの直下に
- 正しく直したらメッセージを消す/成功表示で学習を促進
- 過早バリデーション(1文字目で赤エラー)は禁止
インライン検証は完了率向上に寄与。未実装サイトは依然多く、31%が非対応という調査もあります。
エラーメッセージ:要因と解決策をセットで
- ページ上部にエラー要約+各フィールド横に個別エラー
- 何が/どう違う/どう直すかを具体的に(色だけに依存しない)
- エラーリンクは該当入力へフォーカス
カゴ落ち理由は「追加費用が高い」「会員登録の強制」などが上位に上がっています。そのため、コストの先出し・ゲスト購入・入力簡略が有効です。
モバイル最適化とCore Web Vitals(CWV)
スマホ比率の高いECでは、速さ(LCP)・応答性(INP)・安定(CLS)の3指標を満たすことが体感品質の土台。2024年3月にINPがFIDに置換され、クリック/タップ後の応答性全体が重視されました。まず主要テンプレート(トップ/カテゴリ/商品/カート)で計測→ボトルネック(画像・JS・レイアウトシフト)を特定し、最大要因から順に直すのが近道です。
しきい値の目安と優先課題
- LCP≤2.5s / INP≤200ms / CLS≤0.1を75パーセンタイルで達成
- 画像は次世代形式/適切サイズ/先読み、ヒーローは遅延しない
- サードパーティJSの実測コストを棚卸し→遅延/分割/除外
実装チェックリスト(保存版)
最後に公開前/運用中に使える共通チェックです。担当別(UX/開発/運用)で責務を分け、テンプレートごとに反映できる形に落としておくと差分が出にくくなります。
- ナビ/導線:メニュー→カテゴリ→商品がリンクで辿れる/“適用中の条件”を可視化(チップ化)
- 一覧(PLP):並び替え/価格帯ショートカット/在庫ありを上部に固定
- 商品(PDP):サイズ表・配送/返品・長所短所・比較・FAQを同一画面に
- フォーム:ラベル常時表示/オートフィル対応/エラー要約+インライン/過早バリデーション禁止
- 決済:ゲスト購入・手数料先出し・入力項目削減
- 速度:主要テンプレでLCP/INP/CLSを計測→最大要因から改善
よくある質問(FAQ)
Q1:「選択肢を増やすほど売れる」は本当?
A. 迷いが増えやすく、意思決定が遅くなるのが一般的です。主要選択肢は厳選し、残りは折りたたみやおすすめで補うのが安全です。
Q2:placeholderだけでラベルを省略してもいい?
A. おすすめできません。ラベル常時表示が基本になります。placeholderは補足に留め、入力中も意味が残る設計に。
Q3:エラーはフィールド横だけで十分?
A. いいえ。ページ上部のエラー要約+フィールド横が推奨です。リンクで該当箇所へフォーカスさせましょう。
Q4:無限スクロールだけでもSEO的に問題ない?
A. 次のページURLを<a href>で露出しない実装はNGです。ページ分割や「もっと見る」との併用で解決可能です。
Q5:まず何から改善すべき?
A. チェックアウトの摩擦(項目削減・エラー設計・費用先出し)→主要テンプレのCWV→一覧の比較材料の上出しの順がおすすめ。
まとめ
ECのUI/UXは、普遍原則×画面別の実務で堅実に伸ばせます。まず選択肢の整理(ヒック)・タップしやすさ(フィッツ)・可視性/一貫性(ニールセン)を適用し、一覧/詳細/検索・フィルタ/フォーム/チェックアウトを重点的に調整。最後はCWVの三指標で体感品質を底上げしましょう。
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この記事を書いた人
大阪市中央区にて2009年よりWeb制作・運用支援を行い、1,000件以上の実績を持つWeb制作会社「digrart(ディグラート)」編集部が、本記事を執筆・監修しています。
現場で培った豊富な知見を活かし、Webサイト制作、ECサイト制作、SEO対策、Webコンサルティングの実践的なハウツーをお届けします。
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