“伝わるデザイン”を支えるアクセシビリティとUI/UXの関係

Webサイトを作るとき、多くの方がデザインの美しさや情報のわかりやすさを意識されます。しかし、その「わかりやすさ」は、すべてのユーザーに本当に伝わっているでしょうか。ここで重要になるのが、Webアクセシビリティとユーザビリティという、サイトの根幹を支える二つの考え方です。
Webアクセシビリティは、特別な対応ではなく、すべての人に使いやすいWebを実現するための基本的な設計思想です。近年、社会的な要請や法制度化の動きから再び注目されることもありますが、実際には20年以上前からWeb制作の現場で重要視されてきました。
インターネットが一般に普及し始めた当初から、「誰でも情報を正しく受け取れるデザイン」、すなわち情報の公平性を目指す動きは存在しており、現在のWeb標準のベースにもなっています。
アクセシビリティとユーザビリティの基本:すべての人への配慮とその法的背景
アクセシビリティとは何か:情報へのアクセス障壁の除去と法的側面
アクセシビリティとは、年齢や障がい、使用環境(デバイス、ネットワーク速度)に関係なく、誰もがWebサイトの情報にアクセスし、利用できることを指します。
対象となるのは、視覚や聴覚に制約がある方、肢体不自由な方だけでなく、以下のような幅広いユーザーを含みます。
- 高齢者
- 一時的なケガを負っている方(腕の骨折など)
- 色覚に特性のある方
- 低速なネットワークを利用する方
- 屋外の強い日差しの下でスマートフォンを使うユーザー
具体的な例として、視覚障がいのある方は音声ブラウザ(スクリーンリーダー)を使います。このとき、単なる装飾的な画像であっても適切な代替テキスト(alt属性)が設定されていなければ、画像の情報を文章として受け取ることができません。
また、文字色と背景色のコントラスト比は、単にデザインの問題ではなく、色弱の方や、屋外で強い日差しを浴びながらスマートフォンを使用する方にとって、文字の読みやすさ(可読性)に直結します。このように、アクセシビリティは単なるチェック項目ではなく、情報を確実に、平等に伝えるための基本設計なのです。
近年、特に日本では2024年4月に施行された「改正障害者差別解消法」により、事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務へと変わるなど、Webアクセシビリティの重要性は社会的な要請として高まっています。
※参考:デジタル庁|ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック
国際的にも、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)というガイドラインが策定され、Web制作における世界共通の基準となっています。アクセシビリティへの配慮は、社会的責任であると同時に、潜在的なユーザーを広げ、ビジネス機会を最大化する戦略的な要素でもあります。
ユーザビリティとは何か:使いやすさと効率の追求
ユーザビリティは「使いやすさ」を意味し、ユーザーが迷わず情報を見つけ、効率的かつスムーズに操作できるかを重視します。アクセシビリティが「誰でもアクセスできること」という入り口の担保を目指すのに対し、ユーザビリティは「誰が使っても、目的を達成するまでのプロセスが快適で効率的であること」を目標とします。
具体的には、ナビゲーションメニューの一貫性、リンクテキストの的確さ、サイト内検索の精度などが含まれます。
例えば、オンラインフォームの入力欄でエラーが発生した際、単に赤文字で枠線を示すだけでなく、「必須項目が未入力です」といった具体的なテキストで理由を明示したり、アイコンやツールチップで補足したりすることで、すべてのユーザーが状況を迅速に理解し、次に何をすべきか把握しやすくなります。
こうした配慮は、認知に困難を抱える方へのアクセシビリティ対応であると同時に、誰もがストレスなく使えるというユーザビリティ向上にも直結するのです。
UI/UXとの関係と現場での考え方:体験の設計図とその構成要素
UI/UXとは何か:操作と体験の全体像
UI(ユーザーインターフェイス)は、Webサイトにおけるボタンやリンク、メニュー、フォント、カラースキームなど、画面上の要素の見た目や配置、操作方法といった「接点」を指します。一方、UX(ユーザーエクスペリエンス)は、Webサイトを利用する全体を通してユーザーが感じる体験の質を意味します。
アクセシビリティやユーザビリティは、このUI/UXの設計において土台となる原則です。例えば、音声ブラウザでも適切に情報を読み上げられるよう、HTMLの構造を正しくマークアップすることはUI設計の一部です。また、すべてのユーザーにとって操作が迷わず、ストレスのない設計にすることはUX設計に直結します。
具体的な現場の判断例:トレンドと配慮のバランス
制作現場では、最新のデザイントレンド、美しさ、UI/UX、そしてアクセシビリティ・ユーザビリティの四つの要素のバランスを日々考えながら調整しています。
事例:動画上のテキスト表示
全画面の動画の上に白文字を重ねるといった近年人気の高いデザインは、視認性が著しく低くなる場合があります。この場合、背景の動画に半透明の「オーバーレイ」をかけて暗くしたり、文字の背景に半透明の影(テキストシャドウ)を入れたりして、コントラストを強める工夫を施します。
WCAGでは、通常の文字サイズでコントラスト比4.5:1以上が求められており、この基準を満たすための試行錯誤が不可欠です。
事例:アニメーションの制御
動きが派手すぎると、前庭系障害を持つユーザーにとってめまいや吐き気を引き起こすリスクがあります。そのため、ユーザーが再生・停止を選べる設定を加えたり、OSの設定で「動きを減らす」がオンになっている場合に動きを自動で抑制したりする対応が一般的です。
ターゲットに応じたUI/UX調整:配慮の優先順位付けとリスクヘッジ
Webサイトのターゲットユーザーによって、UI/UXやアクセシビリティの配慮の優先度は変わります。例えば、高齢者向けのサイトであれば、一般的に文字サイズを大きくし、ボタンのタップ領域を広く、十分なコントラストとシンプルな導線を最優先します。
どのターゲット層を想定する場合でも、最低限のアクセシビリティ、すなわち「キーボード操作のみで完結できること」や「適切なコントラストの確保」「色覚特性への配慮」は欠かせません。これらは目立つ要素ではありませんが、結果としてユーザーの信頼獲得、ブランド価値向上に繋がります。
デザインとアクセシビリティ・ユーザビリティの両立:本質的な美しさへ
美しい表現と情報伝達の両立:デザインの深化と衝突回避
近年のWebデザインは、動画や繊細なアニメーション、淡い色調(ペールトーン)を活かす傾向が強く、雑誌やアート作品のような洗練されたレイアウトが増えています。しかし、表現の美しさを優先しすぎると、情報が正確に伝わらなかったり、意図しない操作が発生したりして操作性が低下するリスクが常に伴います。
真に優れたデザイナーは、このリスクを回避するために、クリエイティブな工夫を凝らします。例えば、メインビジュアルでは大胆な淡色を使っても、重要なCTA(行動喚起)ボタンやリンクについては、デザイン性を損なわない範囲でコントラストを最大化し、操作ボタンのサイズや間隔を十分に確保します。
特に、デザインの初期段階でアクセシビリティの視点を取り入れる「アクセシブル・バイ・デザイン(Accessible by Design)」のアプローチが重要です。後からアクセシビリティ対応を「修正」として加えるよりも、設計段階から構造とデザインの調和を図る方が、コストも時間も抑えられ、最終的なデザインの完成度も高まります。
まとめ
Webアクセシビリティとユーザビリティは、単なるWeb制作の「おまけ」や「チェックリスト」ではなく、UI/UX設計の核となる要素であり、「情報を確実に届け、迷わず操作できる体験」を作るための基本理念です。
デザインの美しさや最新トレンドを追い求めることは重要ですが、それらが情報伝達の障壁とならないよう、すべての人にとってわかりやすく、快適に使えるサイトを目指すことで、初めてWebサイトは真に「伝わるデザイン」となります。
大阪でUI/UXに優れたホームページ制作をご検討の方は、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事を書いた人
大阪市中央区にて2009年よりWeb制作・運用支援を行い、1,000件以上の実績を持つWeb制作会社「digrart(ディグラート)」編集部が、本記事を執筆・監修しています。
現場で培った豊富な知見を活かし、Webサイト制作、ECサイト制作、SEO対策、Webコンサルティングの実践的なハウツーをお届けします。
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